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在宅輸血の訪問看護を行いました
クリオ訪問看護リハビリステーション看護師の佐々木です。
今回、クリオとしては初の試みとなる在宅輸血を実施しました。
病気を持ちながらも家での療養を望まれる方に対する在宅医療が普及している中、家で輸血を行うことに関しては様々なリスク・課題などから積極的には行えていない現状があります。在宅輸血の特徴の一つとして、輸血中・輸血後に家族がメインの付添人となる必要が生じます。つまり在宅輸血ではいかに家族が安心して輸血開始を迎え、輸血中・輸血後に有害事象が生じても落ち着いて対応出来る状況を作ることができるかが求められます。
そこで今回実施した在宅輸血を
①輸血前
②輸血中
③輸血直後〜1日
④輸血終了1日後〜3ヶ月
の4つのフェーズに分け、家族が安心して輸血中の付添人を行う上で特に重要と感じた①②のフェーズについて訪問看護師としての関わりから感じたことや課題について書いてみたいと思います。
①輸血前
今回、在宅輸血を行う上で最も重要であったのはこのフェーズではないかと思います。
在宅での輸血は当ステーション看護師にとって初の試みでもあり、未経験からくる見えない不安がうっすらとあり、それ以上にご家族・ご本人も大きな不安を抱えていたことと思います。
そのような状況の中、主治医が輸血にあたって、クリニックと訪問看護師の役割、副作用が生じた際の対応等を明確にしてくれたことで、訪問看護がやるべきことが事前に整理され、想定される有害事象に対応するための事前準備ができた事で不安は大きく解消されました。役割の見える化は、特に有害事象発生時の看護師、家族の対応手順がよりシンプルなものになり、結果的に万が一の場面で判断に迷わないことに繋がります。同一空間に医療チームが複数名いるような病院環境とは違って、在宅では各医療チームに物理的距離が生じる分それぞれの役割がはっきりと明確になっていることが病院以上に求められます。また役割がはっきりとした上で、有害事象発生時の対応を明確に指示してくれることで、輸血の前段階で万が一の状況を想定することができ、見えないこと・未経験で生じる不安の大半が解消されました。
②輸血中
訪問看護師が患者に付き添える時間は診療報酬の兼ね合いから最大でも90分という時間の制約があります。今回の輸血では輸血投与前から輸血終了まで約2時間半を要したので、およそ1時間程度ご家族のみで患者に付き添う必要がありました。またこの間、万が一状態変化が生じた際に1分1秒でも早く看護師が駆けつけることができるかどうかも重要になります。ご家族が付添人となる上で、①のフェーズで行う輸血前に万が一こうなればこうするといた事前準備に加えて、②のフェーズでは万が一に備えて実施中に近くに看護師が待機していることもご家族の安心に繋がります。
一方、これが在宅輸血を行う上での訪問看護の大きな課題ではないかと感じました。この課題を解決するためには
・看護師の人員数を確保しスケールメリットを働かせる
・限られた人員数で最大の力を看護の現場で発揮するための仕組み(I C T環境の整備)
が必要になると思います。
人員の課題については、以前より国から訪問看護ステーションの大規模化が求められてはいますが現状地域ごとにばらつきがあり十分な状況ではありません。幸いにも弊社は21名の看護師が在籍しています。規模があるからこそ出来ること、やらなければないならない事があると思います。在宅療養の可能性を広げる一歩を踏み出すことは地域における大規模ステーションの使命であると考えています。
同時に、規模の問題は簡単に解決できる問題ではありません。限られた人員で最大の力を発揮させる仕組み作りも重要になります。そこで大きな力になるのはI C T環境の整備であると思います。現在弊社では1人1台iPadを配布し、勤怠管理、電子カルテ、ご利用者の情報共有全てのことをこのiPad一台で行うことが可能であり、事業所に立ち寄らなくても業務が遂行できる状況になっています。場所を選ぶ業務を場所を選ばない業務に変換することで限られた人員の力を最大限現場に注ぐことが可能になります。
輸血直後〜1日、輸血終了1日後〜3ヶ月
この間は輸血による副作用が生じるリスクの高い時期となります。このフェーズにおいてもフェーズ①②と同様に、想定される副作用とそのチェックポイントについて家族に情報共有し、万が一の際にご家族が判断に迷わずに看護師に連絡ができる準備を整えておくことが重要になります。
最後に
今回クリオでは初の試みとなる在宅輸血を実施しました。訪問看護師として今回の経験から在宅輸血のみではなく、あらゆる医療ニーズのある在宅療養者の家での生活を支えていくことが出来る訪問看護ステーションでありたいと感じました。ただ効率が良くなるだけ、ただ規模が大きくなるだけではなく、何のための規模で、何のための効率化なのかが自分の中で整理できました。また、地域での医療機関や他事業所との連携が大きな困難を乗り越えていく上で重要で、だからこそ心の通った連携が普段から大切なのだと感じました。
今回このような機会を頂いた清水メディカルクリニック様に心から感謝申し上げます。
これからも、地域に求められる訪問看護ステーションとなれるよう日々のご利用者からいただく経験を丁寧に積み重ねていきたいと思います。