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脳血管障害後遺症患者の退院後の転倒
短下肢装具とは、麻痺の影響等により足首が不安定となり歩きにくさ、立ちにくさ等が生じた方を対象に作成する長靴のような装具です。
側方に金属の支柱がついているタイプや、プラスチックで型取りして作られたタイプなど様々な種類があります。
この短下肢装具、脳血管後遺症の患者様が入院中に作成するケースが多いです。装着すると装具の力によって歩行時の麻痺則足の降り出しが楽になったり、麻痺側の支えが安定したりします。
麻痺の程度が強ければ強いほど短下肢装具は大切な役割を果たすのですが、装着に手間がかかる(上肢に麻痺があると片手で装着する必要がある)ため在宅生活移行後に装着しなくなるパターンが非常に多いです。
短下肢装具の役割 降り出す時
移乗時や歩行時に麻痺側の足を前方に降り出す際に、通常はつま先が引っかからないように振り出しのタイミングで無意識につま先を持ち上げます。
これが麻痺の影響を受けるとつま先がうまく持ち上げられなくなり、つま先を地面に引っかけるなどして転倒の原因になったりします。短下肢装具を装着するとつま先が下に下がらないよう装具が受け皿の役割を果たしてくれるため、ひっかりにくくなり麻痺側足の降り出しがスムーズになります。
短下肢装具の役割 支える時
短下肢装具は支えの補助にもなってくれます。通常、下肢に荷重が加わった際に、下腿が前方に倒れ膝が折れてしまわないようにないように下腿の筋肉が収縮し下腿を後方に引っ張り込む役割を果たしてくれます。一方で麻痺の影響からこの下腿の筋肉が働きにくくなると急激に下腿が前方に倒れてしまうため膝折れしやすくなったり、支えが不安定になったりします。短下肢装具の中でも足首が固定されたタイプの短下肢装具では、麻痺側下肢のに荷重が加わった際に装具がその荷重を筋肉に変わって受けてくれるため荷重時の安定性を生み出してくれます
装着したりしなかったりが一番ダメなんです
短下肢装具を作成している場合、おそらく病院では短下肢装具を装着した状態での歩行練習・立位練習を行ってきたと思います。短下肢装具ありきで運動学習が進んで行っている分、その短下肢装具がなくなることは全く違う歩行パターンを再学習する必要が生じるのです。せっかく積み上げてきた歩行練習がそれでは勿体無ないですね。さらに、装具を装着したり、しなかったりするパターンでは全く違う歩行パターンが2通りできてしまうため歩行時の転倒リスクが非常に高くなってしまいます。つけたり・つけなかったりするくらいであればどちらか一方に絞った方が良いです。
退院直後の転倒リスクが非常に高い
脳血管障害患者では退院直後の転倒確率が非常に高いと言われています。特に高次脳機能障害等がある場合には注意が必要です。
脳血管障害では回復期リハビリテーション病棟で約半年間リハビリを受けて帰ってくるのですが、入院中の生活環境と在宅での生活環境は全く違うものです。在宅環境に近い設定で訓練を実施していたとしても、帰ってくれば狭い通路を通らなければならなかったり、滑りやすい畳の上を歩かないと行けなかったりします。また訓練中に履いていた室内用の靴は、退院後ほとんどの方が履いておりません。靴を履いた歩行と、履いていない歩行では歩き方が全然変わってきますので、そういった面でも帰ってきた直後の家の生活環境に馴染ませるためのリハビリテーションは重要であると思います。一時的でも良いです。生活に馴染むまでの間のみだけでも良いので退院直後の訪問のリハビリ導入はめちゃくちゃ意味があると思っています。ちなみに脳血管障害患者の転倒は麻痺の程度が強ければ強いほど大きな転倒になりやすいですし、健側の骨折が生じてしまった場合の回復にかかる時間は半端じゃないです。